No day but today

ミュージカル関連をディープかつマニアックに語りたいがために作ったブログです。普段はTwitterでわっしょいしてます→@musicalamnos

観劇録〜Defiled 7/17夜

7月の舞台系やら配信のことやらをまとめて書こうと思ってたけど、

Defiledでまあまあ長くなりそうだったのでとりあえず独立で、、、

(深夜に殴り書いてるのでとっちらかっております。ねむい。)

 

がっつりネタバレ。もし今後観るなら初見は展開もラストも知らないで挑んだ方がドキドキ出来ると思うのでご注意ください。。

 

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Defiled 7/17夜 @DDD青山クロスシアター

和樹ハリー・壮麻ブライアン回

取るときにはフランケンペアや!と思ったんだけど、始まってみれば全然違う世界・違う役にあっという間に引き込まれて楽しかった。(そうでないと困る)

リーディングで、手元に本もあってめくりながらの芝居だけど、テンポの良い会話に耳を傾けているうちに夢中になった。まごうことなく「演劇」でした。

 

階段を降りきったところで検温、入り口で電子チケットを見せてなんかスタンプみたいなのを押してもらうシステム。

DDDは前方フラットがわりと見辛い(埋もれて)印象だけど、今回はフラット部分が2列だけだし余裕を持った千鳥配置だし舞台は高さある上に座っての芝居なのでストレスはまるでなしです。

 

席がもろスピーカーの音を浴びる場所だったのもあるけどとにかく音が凄い。

冒頭の音楽も、最高潮の時は一瞬ライブハウス来てるような感覚で、床からも振動が伝わってきて、一気に「体験」しているなというモードになれたのが良かった。

暗転の中、仕掛けられた爆弾が赤く光って音楽も音量MAXになるあたり本当にアトラクションのようで。

この冒頭のシーンが最後に繋がってくるのが効いてて、2回目以降の観劇ではこの時点で全然違う気持ちだろうな。。

 

紙の目録カードが破棄され、電子システムに置き換えられることを阻止するため、図書館に爆弾を仕掛けて立てこもる元図書館員のハリーと、それを説得にきた刑事のブライアン。

いやこれ本当に人次第でいろんな形に見えてすごく面白いんだろうなぁと思った。

ハリーの主張にしても、共感できたり、いやそれは〜と思ったり、焦っていたり、達観していたり、どうにでもなりそうだし、

ブライアンもハリーに寄り添っているのがどこまで本心なのか仕事のテクニックなのかというのが人によるんだろうなぁと。

和樹ハリーと壮麻ブライアンはとてもバランスが良く見えた。

和樹ハリーの主張や感情の起伏は個人的にはとても分かるなぁと思ったし、こういう人(顔は良いけどこだわりが異様なまでに強くて譲れないものがあって賢いんだけど生きづらい、万人と上手くやれるタイプではない)であることも、その結果の行動も、なんというか、この人はこうするよね。分かる。という感じで、とにかく「分かる。」ハリーだった。

壮麻ブライアンは「ベテラン刑事」らしく、その技が巧みだし、必ずしもすべてがパフォーマンスじゃなくある程度は本当に心を向けたり寄り添ったりしてるんだろうけど、どこからが本心でどこからが仕事としての偽りなのか分からないさじ加減が絶妙だった。

 

「目録カードが破棄されて、電子システムに置き換わる。」

それは古いものから新しいものへの移行を受け入れられないことであったり、

決められたことに対して抗えないことであったり、

この一つの変化を許すことがやがて大事なものをすべて奪われることに繋がるということであったり、

色々な話に繋がるし、今の時代、今の状況と繋がる部分もあったりもして。

爆破してしまえば目録カードはもちろん、愛する図書館自体も失われてしまうけれど、自分の目の前で目録カードが持ち去られ破棄されるよりもその光景を見ることなくすべてを爆破して無くしてしまった方がまだマシだというのって、

めちゃくちゃなようだし、冷静に考えたらどうせ無くなるなら交渉に応じて死なずに図書館もそのままに自分も対価?を得た方が良いじゃないかという説得も当たり前に分かるけど、でもその気持ちって分かるよね。

結果は同じかさらに悪いものだったとしても、それを認めたりその変化を目の前で唇を噛んで見ていなくてはいけないくらいならいっそすべてを壊してしまえ。

たとえ自分の命を投げ捨てたとしても。理想に対しての殉職。

 

その対極と言えるようなものが、ブライアンが語る「現実」。

結婚して、子供をもって、命をすり減らして働いて帰って、妻も気づいてるけど「全然大したことない」と口にして、抱いた子どもにゲロを吐かれてゲロまみれになる。

そんな「現実」。でもその中には「大したことない」と伝えることで、実際はそんなことないと気づいている妻も「もしかしたら本当に大したことないのかも」と思えるようにというぼんやりとした優しさも込めて。

たぶんブライアンがハリーに話した家族のことはだいたいは本当なのだろうし、ハリーがブライアンの奥さんと話すシーンが良いよね。。

私自身はそんな「現実」に、というかその「現実」とやらをみんなが当たり前に抱えなきゃいけないことに違和感を覚えるので、いっそ理想に殉職してしまいたいハリーの気持ちはわりと分かるんだよなぁ。

いやまあその「現実」とハリーの主張が必ずしも180度対極にあるわけではないけど、ブライアンは、現実が見えていたならこんなこともしないし交渉を拒むこともないと思っている部分はあるんだろうな。

 

正直本当に結末がどうなるのか分からなくて。

ブライアンの奥さんとハリーの電話すごく良かった。完全に電話で会話してたもんな。。あれ芝居なんだねすごいわ…(今さら)

ブライアンの話がどこまで本当だったんだと疑心暗鬼になっているなかで、奥さんや国の話が嘘ではなかったことが分かって、その後の会話が半分泣きそうになりながらちょっと早口ででも朗らかで。

ここまでブライアンとの対話だけだったのが、ここでハリーが立てこもる前どんな「社交的な一匹狼」だったのかなんとなく感じさせるような、新たな角度の一面が見えるのがすごく良い。。

電話が終わって涙を押さえるハリーの、優しくて穏やかな「こんな素敵な奥さんがいるって分かってしまったらもう僕はあなたを撃てない。」「だから出て行ってくれ」も、そのあとのブライアンの提案も、それをゆっくりと受け入れるハリーも、全部良かった。

 

だからブライアンを閉め出した時にこっちも、おいハリー!?!ってなったしその瞬間の諦めたるや。。

でも和樹ハリーは本当に一瞬受け入れて、でもなんとかカード(おい←)の存在を思い出してしまったし自分はもうクビになってそれが出来ないことも思い出してしまったから、ああやっぱり無理だってストンといってしまったように見えた。

興奮や焦りを越えて、一瞬納得しかけたからこそ「やっぱり無理だったんだ」っていう穏やかな諦めというか。

そうだよなあって、もうこうするしかないってやっぱり決まっていたんだなぁって、自嘲ではなくてうっすら微笑みの浮かぶような。

 

最初とリンクするあの音楽、場合によってはホラーな感じになる気がするけど、

和樹ハリーに関しては殉職者が召されるのに優しく包み込む賛美歌のようでさえあったように思う。(まあやってること的にそうではないんですけど)

最後にあったのは苦しみのない、ゆっくりと水の底に沈んでいくような感覚でした。

あの沈んでいくような感じ、ちょっとタイタニックを思い出し。

(そういやタイタニックでも共演してるなこの2人)

 

私は和樹マンの破滅が好きで、(かっきーも破滅が好きだけど彼の場合は自滅の方が近い)不可抗力で引きずりこまれ、どこか穏やかな諦めと、薄っすらとした微笑みとともに滅びるみたいなやつがとても似合うし良いなと思うので、今回の役はまさにそんな好みに刺さるやつでした。

 

あのラストにちょっと放心気味でぼやーっと見てたら椅子から立ち上がった和樹マンがもうハリーから本人の笑顔へと戻ってて、あ、お、そうか…ハリーは演じてたのか…ってハッとなり。

あの瞬間に、自分がめちゃくちゃ入り込んでいたことを実感した。

 

今回、この話のベースにある「本」というものが私自身好きなものだったから余計にするりと入り込めたような気がする。

紙の本が好きで、ページをめくる感覚も好きで、重みも、本棚の本に指をかけて引っ張って手に取る感じとか、その文面や外側や字体やらに込められた人間の想いとか、電子書籍への馴染めなさや愛着のわかなさ、そんな自分の感覚が良い具合にリンクしたかなと。ピンポイントに欲しいものを提供されるんじゃなく、偶然目に触れたり、周辺からふと繋がったりすることから生まれる豊かさとか。

合理的にしたいことも多い中で、確かに「本」や「図書館」にはそれ以上に感情として変えたくない気持ちが自分の中にあって。

逆にそうじゃない人もいるだろうから、そうなるとまたちょっと見え方も違ったりするんじゃないかなと思う。

 

いやー7割方寝ながら書いてる感じなので起きて読み直したらボツになりそうだ。

今回わりとハリー視点なのは、共感できたというのもだけど、シンプルに席位置がハリーに近かったので必然的に集中がそっちにいきやすかったからです。

 

もう1回、違うペアで観劇予定なので、どんなハリーで、どんなブライアンで、

そしてどんなDefiledになるのかそれまた楽しみ。

どうか最後まで無事に公演が出来ますように。。

 

おやすみなさい。。