No day but today

ミュージカル関連をディープかつマニアックに語りたいがために作ったブログです。普段はTwitterでわっしょいしてます→@musicalamnos

2017レミゼを語る ①バルジャン編

レ・ミゼラブル30周年帝劇公演が千秋楽を迎えました。

5月に開幕して2ヶ月間本当にあっという間!

今まで恒例行事程度にしか観ていなかったこの作品ですが、今回は海宝マリウスにホイホイされて8回ほど帝劇へ足を運びました。

いやー楽しかった。素晴らしかった。

想いの冷めないうちに、役別の感想を残しておきたいと思います。

長すぎて最後までたどり着ける自信がないけど!

よろしければお付き合いください(*^^*)

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バルジャン

福井晶一さん(2)

(自分がチケット取ったんですけど)残念なことに初回2回で終わってしまった福井バル。5月でおしまいでした。。

初回でマリウス追うのに必死だったこともあり、細部の記憶があまりない。

福井さんは後半にかけてパワーアップ型と聞いたりするので、もう1回観ていればなぁ。。と心残りです。

印象としてはスタンダードなバルジャン。標準型。

素晴らしい美声かつ言葉もダントツで聞き取りやすいので耳に優しいです。

穏やかな印象があるので、荒れてる時期より市長以降の方がしっくりくる。

13年で不安定に感じた裏声部分も今回は問題なく。彼を帰して もしっかりと歌いこなしていたように感じました。

他2人がエネルギー大爆発で己の軸に振り切ったバルジャンなので、開幕直後にしか観ていない福井バルはどうしても王道な印象がある。

次回チャンスがあれば絶対に後半で1回は観るようにしたい。

 

吉原光夫さん(2)

個人的には光夫さん自身に対してはジャベっぽい印象を抱いていたりするんですが、、

すごく良いバルジャンなんだよね〜役者さんだよね。。(当たり前)

プロローグの勢いとエネルギッシュさは光夫バルがダントツです。

ジェットコースターのような激しさがある。

バルジャンの人生があのわずか10分ほどではっきりと鮮やかに浮かび上がる。

テンポが上がった分、あそこで表現しきるのは相当難しいと思うんですが、光夫バルのプロローグの密度は本当にすごい。

荒々しく、教会で食べ物をもらったときもちゃんと座らず手すりに腰掛けて貪ったり。

かといえば司教に頭に触れられて泣き顔に。

ラストの♪生まれ変わるのだー はオケが終わっても残るほどのロングローン!

圧倒されているうちに終わってしまうんですよね。。

 

全編を通し、光夫バルは戦闘面激強だし荒い(ただし女性子どもには優しい)。

工場でファンテをなだめるときとか、手紙を届けたエポが女の子だと気付いたときとか、女性への優しさは顕著。

その性質はもともと昔から持っていて、囚人時代に色々変わったけどそこは変わらず残っていたように感じました。

精神的にも結構タフな印象。

馬車の件の後のジャベとのやり取りも、毅然としていてもはや高圧的なくらい。

だいぶハッタリ効かせて市長やってたんだろうなと思います笑

対決なんか勢いが凄すぎて、ジャベは絶対殺されると思っているだろうなと思うし。

バリケードでも光夫バルのあまりの気迫に勝てずにあの場を去ったような感じがする。

宿屋でもテナ夫婦への苛立ちを隠そうともしない。

 

でもその一方で情に厚いところも感じられて。

最後の戦い後、意識を取り戻してバリケードの惨状を見た光夫バルは呻き声をあげます。

とてもタフに見えた光夫バルが学生たちの死に一瞬理性を失うこの芝居、心に刺さる。

コゼットに対しても他2人のように優しく包み込むというよりは、深く愛していて危険は排除するけどベタ甘ではなく堂々としたムファサのような父親像。

なんですが、、マリウスへ告白するためにコゼットを行かせて、マリウスに真実を話し、その場を後にする、この一連の流れで驚くほど弱り老け込む光夫バル。

あれほど気丈で堂々としていた光夫バルがコゼットを失うことで一気に弱ってしまうのです。

ここで初めて、力強くコゼットを守っていたように見えた光夫バルジャンが、実は何よりコゼットの存在に支えられて生きていたことに気づかされる。

コゼットには遠く及ばずとも、たとえきっかけは彼女のためだったとしても、いつしか大切に想い愛情を持ち命まで救ったマリウス。

彼に事実を告げ、コゼットを守ってもらう決断をしたことで、バルジャンは本当に1人になる。

 

光夫バルは海宝マリウスとの組み合わせしか観ていないけど、この2人の芝居最高。。

他のペアだとコゼットとバルジャンの結びつきが強く、エピローグマリウスは蚊帳の外気味のこともあるんですが(それも当然でそのパターンも好きなんだけど)、

この2人だとバルジャンとマリウスの軸もしっかりと見えて好きです。

光夫バルは他は比較的淡々と告げているのに「会えば別れが辛いっっ!」は想いが思わず溢れ出てしまった感じで、そこでマリウスもはっきりとバルジャンの意志を理解したように思える。

海マリが告白を重く受け止め(多分バルの死期が近いことも悟っていたはず)、そのときの話を前提にコゼットへの語りかけを聞いているのも分かるし、

「私は父じゃない」と話し、コゼットがバルジャンの胸に顔を埋めるのを強く抱きしめながら、じっとマリウスと目を合わせ想いを託すのも、海マリがしっかり受け止めるのもはっきりと分かる。

なんかこう、、電流のような痺れをくれる芝居を見せてくれる方です。光夫バル。

 

ヤン・ジュンモさん(4)

大好きなヤンバル。

彼のバルジャンの1番の魅力は「神」と「愛」が軸として徹底されているところ。

そしてそれはジュンモさん自身の生き方や宗教観からも滲み出る説得力なのかなと思います。

母国語でない日本語で演じながら、ここまで言葉にそのまま想いを乗せられるものなのか。。

 

プロローグ、♪失せろという〜 終わりでふと我に帰りコインの持ち主の少年を探そうとする芝居があり、すでに良心が見られる。

そもそも心優しく純粋な人だったんだと思います。

教会から逃亡後捕まったときには、殴りかかられそうになると両手をあげ、抵抗の意思はない、やめてくれと言わんばかりの泣きそうな顔。

彼が一番恐れていたのは「恐怖と絶望が満ちたあの地獄へ連れ戻されること」。

それを強く感じます。独白での「またあの地獄へ送り返さずに」や裁きでの葛藤も。

司教に頭を触れられ、自分が赦しと更生への足がかりを与えられたことを悟ったヤンバルは赤ちゃんのように泣き声をあげる。

そして葛藤の独白。印象的なのは、息も荒く叫ぶように歌い、正面からの光を避けるように腕で顔を覆っていたバルジャンが「神の御心か」でふと落ち着いたトーンになり、光をはっきりと見るところです。

ヤンバルはあそこで神の御心を悟り、その光にしっかり顔を向けて舞台前面まで進みでる。

曲調、照明、芝居がすべてがリンクし、バルジャンの転機のタイミングをしっかりと伝えてくれる。

ここが私がヤンバルから強く神の存在を感じた1つのポイントです。

 

リトコゼとの出会いのシーンもヤンバルの優しさ、愛情深さがにじみ出ます。

驚いて後ろに倒れてしまったコゼットに、微笑みかけ、さらには手をくるくると回してお辞儀をします。(恐らくこれは毎回)

楽には握った手が冷たかったのか、そのままさすって温めていた。

「はい、コゼット」を聞いて表情には大きく出さないけど驚き、(この子が…)と動揺しているのが分かります。間が長い。

そしてつぶやくように「そう、コゼット。」

ヤンバルとしては道で小さな少女が困っていそうだから助けただけで、まさか目的のコゼットがこんな暗い場所でこんなに不憫な姿でいるとは夢にも思っていなかったんだと思います。

宿屋でも手の甲にキスをしたり、頰に触れたり、暇さえあれば愛情を示すヤンバル。

救い出し、人形をあげるときも、目を瞑らせる前にリトコゼの鼻をちょんとつまみます。(恐らくこれも毎回)

コートを着せて、お辞儀をしあうのはどのバルジャンも共通かと思いますが、

ヤンバルは出会ったときにもお辞儀をしたことでこの時点ですでに2回目。(これがマリウスへの告白前に繋がってくる)

 

コゼットが大きくなってからは、彩花コゼだと感動が5倍くらいです。いやもっとか。

とにかくコゼットに深い愛情を持ち、守り育てているのがよく分かるヤンバル。

相手のコゼットがパパ大好きっ子で愛に満ち溢れた気遣いの子だと、ヤンバルの愛情が余計に引き立ちます。

コゼの「何も知らず聞いていない〜」という呼びかけにすっかりしょぼんとしてしまうヤンバル。

彩花コゼだとハッと気づいて、違うの!私はあなたに愛されて幸せなのよ!ってフォローに入る感じが最高に好きです。 

 

対ジャベールも。ヤンバルはジャベに敵意も恨みもないのです。

コゼットを守ることが最優先だから、その障壁となったジャベを押しのけ避けることはあっても、ジャベ本人に恨みなんかない。

だからあそこまでまっすぐにジャベに向き合い、逃すんだと思う。

「プリュメ街55番にいる。」を告げるとき、少しの躊躇があります。

今までの全てが無駄になってしまうかもしれないという想いもあったはず。

でもマリウスがいれば最悪自分がいなくなってもコゼットを守れると思ったのではないかなぁ。

 

彼を帰して、豊かな歌唱はもちろんだけど、まさに神に語りかけるようなあの神聖な感じが大好きです。

個人的にずっと、ヤンバルはコゼット第一で彼女のためにマリウスを助けているような印象があったんですが、楽にして他の学生たちに対しても救いたいという想いを持っているのかなと感じました。

彼を帰しての曲中にはっきりと左右に目をやり、他の学生たちのことを見ていたのと、マリウスを抱えた状態でバリケードを見上げ、辛そうに声を漏らしていたのに気づいて。。

 

そしてスーパー泣き所タイム。

マリウスとコゼットを見つめながらゆっくりとやってくるヤンバル。すでに足元がよろついている感じ。

マリウスへの告白前に、コゼットを家に戻すところ、笑顔で見送ろうとするんだけど、1度グッと手に力を込めて引き止めるヤンバル。

これで最後になると思うと離れがたくて思わず引き止めてしまった。

でもコゼットに不自然に思われないように、笑ってくれるように、あのいつもの大仰なお辞儀を。

(最後の数回はもうその時点で泣き顔で、顔を見せないよう下を向いたままお辞儀をしていました。。

楽ではリトコゼにしていたように手をさすったりもしていて。そこ連動させてるのか…と思って泣けた。)

ちゃんとニコッと微笑んでスカートを広げお辞儀を返すコゼットが愛おしいです。

これまたコゼキャストによって、可愛らしかったり、ちょっと気取ったようだったり、個性が出ていてね。。

もうコゼットが去ってからは、ひどく弱々しく前傾姿勢で絞り出すような言葉。

マリウスも明らかにこれはただ事ではないと察している。

細く、弱く、泣きそうな告白。

「頼むよ」にすべてがこもっていて、マリウスもヤンバルを心配しながらもそれを拒むことができない。そんな感じ。

マリウスにすべてを託したバルジャンは、コゼットのいる家に向かってゆっくりと投げキスをして、共に過ごしたプリュメ街55番地をあとにするのです。

すべての目線や動きからコゼットへの愛情と別れの寂しさがビシビシ伝わってきてとにかく辛い。 

 

そしてエピローグ。もう瀕死です。言葉もたどたどしく明らかに死期が近い。

「夢にはコゼット来て死ぬ俺に泣いた」とうわごとのように呟きます。

コゼットが来てくれたとき、正直ヤンバルは自分が生きているか死んでいるか一瞬判断ついていないんじゃないかなと思ったりする。

その存在を、体温を引き止めるようにずっとコゼットの腕をさすり続けるヤンバル。

ようやくこれが現実で、今本物の愛するコゼットが側にいるのだと理解する。

「生きてみよう」から「最後の告白を書いた」の部分は、はっきり自分の現状を理解し、もう間もなく死を迎えることも分かって、最後の告白を自らの手で託そうとしているように思う。

悲しむコゼットをなだめるように、リトコゼにしたように鼻をちょんとつまむヤンバル。ここも過去とのリンクです。

これは完全にただの推測でしかないですが、手紙の探し方や、マリウスへのアクションもほぼないことから、ヤンバルはラストシーンもう目もよく見えていないんじゃないかと思ったりします。

コゼットに対しても顔を見るというよりは、ひたすら触れてその存在を感じようとしているような印象。

とにかく最後の瞬間までコゼットを想い、そして召されてからもずっと司教と対面するまでコゼットから目を離そうとしないヤンバル。

司教との出会いで「神の御心」「神の愛」がはっきりと彼の軸になり、ファンテとのことで自分が守り愛する対象が明確になる。

それからはもうずっとコゼットを幸せにすることだけが彼の人生の意味になる。

そんな、ひたすら愛に満ちたバルジャンでした。

彩花コゼとヤンバルの愛に満ちた親子が大好きでした。

 

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あれ、、これほぼヤンバル語りになってない?なってますね汗

もちろんどのバルジャンも素晴らしく、大好きだったけど、

中でもヤンバルは今までのバルジャン概念を打ち崩してくれたところがあり、

色々語っているうちに長くなってしまったのでした!!仕方ないね!

バルジャンだけで5,000字超えてしまったので今後が怖いですが、、

ある程度は残しておきたいので頑張ろう。