※ネタバレ含みます
さて。
私にとって2018年最大のイベント、
シアタークリエ10周年記念公演「TENTH」
初週の『Next to Normal』が終わってしまいました。
↑初演ポスター
2部構成、もちろん2部のガラコンサートも楽しかったんですが、
私としては1幕のN2Nダイジェストが大本命。
超絶楽しかったです。
作品は決して楽しいものじゃないけれど、観劇しててこんなに「楽しい…たまらん…しんどい…楽しすぎる…」となったのは久しぶりでした。
前情報が「ダイジェスト」だけだったので、まさかここまでしっかり形になっているとは予想もしておらず、、
初日開けたときの衝撃ったらなかったです。
千秋楽での1人1言のご挨拶で、涙ぐみながらうんうん頷きまくっていた私ですが、
今回のカンパニーが本当に大好きになりました。
ダイアナ 安蘭けいさん
初演メンバー①とうこさん。
個人的にとうこさんは宝塚で初めて「あ、この人好きだなぁ!」と思った初恋の人in宝塚なのです。
正直に言おう、歌唱力は男役時代の方が断然高かったタイプの方だ。
今回も初日はだいぶ歌がキツかったけど、後半になって急に地声音域が広がって、本人が表現したい部分で地声を張れるようになったんだなという感覚でした。
だいぶスロースターターでおられるww
でもね、とうこさんのダイアナとても好きだったんです。
(そもそも声質とお顔とスタイルが好きなんですけど←)
個人的な好みとしてダイアナは、とても激しくて魅力的で、でもリアルであって欲しいなと思うのです。
ある意味「普通」の周辺を漂うこの作品において、ダイアナの存在の仕方というのはとても難しいだろうな。。
強い女性であり、弱い女性でもあり、母であり、妻であり、女でもある、そんなとうこさんのダイアナのバランスが何とも素敵でした。
かつて、ゲイブを亡くすまでのダイアナがいかに生き生きと強く激しく輝いていた女性だったのかが自然と感じられる。
華奢な体から爆発的なパワーが発せられて、相手をはねのける時もあれば、弱々しく相手の腕の中に抱きとめられる時もある。
そのどちらもがまったく違和感なく1人の人物として描かれるのが好きでした。
Maybeでの涙のぬぐい方が男前。楽にはラストにナタリーの両頬に流れる涙を指でグッと拭ってあげていて超格好良かったっす。
個人的にはとうこさんのお芝居って、シンプルすぎずわざとらしすぎず舞台でちょうど良いなと感じるさじ加減なのよね。
あとは衣装が映える!赤いワンピースやトレンチコート、白ブラウスに黒パンツと…顔が小さくてスタイルが良くて美脚。。
My Psychopharmacologist and Iでドクターとポーズ決めるシーンなんてめちゃくちゃ美しかった。
ダイアナのお芝居がとっても好きなので再演もぜひ観たいとは思いつつも、
その際にはもっと早くから歌が本調子になって欲しいな…!(切実)
ゲイブ 海宝直人さん(別記事)
別記事で死ぬほど書かせていただきます。
ダン 岡田浩暉さん
お名前は存じ上げていたものの、舞台で拝見するのは多分初めて。
禅さんとダブルでフランツを演じておられた優しめおじさまなイメージでした。
何というか、あまりに馴染んでいるので初演メンバーにしか思えない。
いつも目を細めて優しそうに笑っていて、何だろう困ったときにも笑うようなタイプ。分かります??
ダイアナがおかしくなってしまってからの17年間、ダンがどうやって支えてきたか容易に想像できます。
ずっとずっと、何が起きても、どんな時でも微笑みかけて支えてきたんだと思うのよ。
自分の気持ちは抑え込んで、ダイアナを支えることに人生全てをかけて。
「正しくなる」のを待ち続けて。
彼もまた「ダイアナを支えること」に依存して、ゲイブの死と向き合わないままに17年間を過ごしてきてしまった。
いや、死じゃなくて「自分自身の悲しみ」に。
そのダンが初めて取り乱して、ダイアナからオルゴールを奪い取り、投げつける。
(このオルゴール、色んなところに行きましたね。。
個人的にはゲイブの足元あたり舞台ギリギリがベストポジションだったんですが、1回勢い余って客席に落ちちゃってからは守りに入ってしまったのが残念だったww)
ダイアナが出て行くと告げるSo Anywayでは、一切顔を上げられずに真下を向いたまま。
I Am The One (Reprise)は、岡田ダンと海宝ゲイブだったからこそのあの空気になったんじゃないかなと思うんですよね。
「あなたは僕を忘れろと言った、それが誰か分かっているはず」という海宝ゲイブの迫り方も、決して怒りや憎しみはなくて。
爆発そうな空気にビリビリするけど、そこにあるのは寂しさと愛だったと思うの。
「ゲイブ……ガブリエル」と呼びかけるあの泣き顔は、忘れられません。
勝手な印象だけど、岡田ダンは赤ちゃんだったゲイブにたくさん名前で呼びかけていたんじゃないかなと思うし、だからこそ彼を亡くしてから1度も名前を口にしなくなかったのではないかな。
たぶんダンだってとっても愛していた息子で、その名前を、成長したその姿を見ながら口にした瞬間、心の奥底に抑え込んでいた想いが溢れだしたんだと思うし、まっすぐ目を見て「やあ、パパ。」と呼びかけられて、震えながら涙するんですよね。。
基本2幕ガラコンも出演されていましたが、穏やかでにこにこしてるのは変わらないけど、ダンの面影は全くなくて、当たり前なんですけどおお俳優さんだなぁと思ったり。
ナタリー 村川絵梨さん
初演メンバー②
完全なる初めまして。NHKの連ドラヒロインとかもされてたんですね。映像疎すぎて全く知らなかった。
周りがほとんどミュージカル歌唱な中で、1人まったく違うタイプの歌声。
初日が耳が慣れず、台詞が上手いだけに歌になると急に「歌」になってしまうような感覚だったけど、
私が慣れたのか?歌にきっちり感情が乗り切るようになってきたのか?
気づけば彼女のナタリーの魅力にどっぷりでした。
いやでもよくあんな突き抜けるような強い地声毎日出していられるなぁ。。
聞いてると思いっきり喉に負担かかりそうな感じなのに8日間疲れを感じることもなく、叫び声も全力だし、「最低!♪彼女はーーーー!」の流れとか喉の強さが尋常じゃないと思う。。
ダイジェストになったことで、ナタリーの「天才だけど変人」感は薄めで、
ひねくれて気が強くて素直じゃないけど「愛されたい」という強い気持ちがひしひしと感じられるキャラクターだったかなと。
生きているのに、実際にその目に映るのに、見てもらえない娘。愛をもらえない娘。
Superboy and the Invisible Girlでの「あなたが会いたいのは息子ね!娘じゃない。私はここよ。」 「よく見て透明のガール。ここにいるわよ。 消えてしまう前に見つけて。」にこもった16年間の想いが突き抜けるようなまっすぐ強い歌声でぶつかってくるところ、好きでした。フルで聴きたかった…!
ずっと辛く、苦しんでいるのに、ナタリーは優しいんだよね。
ダイアナが記憶を失くした時の、「分かった。いいよ。」とか記憶が戻ったと喜ぶところとか。
Maybeとかも簡単な和解なんて出来なくて、でも初めてダイアナがまっすぐナタリー自身に向き合って、想いを伝えてくれた、それがどれほどナタリーにとって大きなことだったのか。よく分かる。
結構よく泣いていたけど、千秋楽はもう下を向くと大粒の涙が床に落ちていくのがはっきり見えるほどの泣きっぷり。
あの、やっぱりとにかく芝居が上手い。それに尽きる気がする。
村井ヘンリーとの関係性もとても素敵で。ナタリーにヘンリーがいてくれて本当に良かったなぁとしみじみ思います。
観る前までは、ミュージカル系で昆ちゃんのナタリー観たいなぁと思っていたけど、
(いや観たいのは変わらないけど)再演の際にはぜひ村川さんのナタリーにも会いたいです。
ヘンリー 村井良大さん
村井くんのヘンリーなんて死ぬほど似合いそうだと思うじゃない?当たりです。
村井くんという俳優さんとヘンリーという役の親和性も高いし、個人的には海宝ゲイブと村井ヘンリーの対極に近い別ベクトルの魅力がとても良いなぁと思ったりしました。
同い年のお2人だけど属性や強みが違って、それぞれの良さがきっちり活かされた舞台で。
「不完全」や「平凡」な役が絶品な役者さん。
どこか地に足のついた人間らしさというか、完璧じゃない人間(役)だからこそのあたたかみとか愛おしさとか、そういう魅力がある俳優さんだなぁと思う。
ヘンリーは実際に「注意欠陥障害」なの?
治療用マリファナ(オーガニック)、「効き目あるの?」「ううん」のやりとりで混乱してきた。
ラリった告白での踵を地面につけない感じとか、ぐわんぐわんするような歌い回しとかはまさに、「おかしい」様子だったけど、それ以降はごくNormalに見える。
ナタリーと出会って、僕は君のとってパーフェクトになれる!とヘンリーが変わることが出来たのか、それとも他の人との対比で「普通に見える」演出になっているのか。。それとも…?
そこは掴みきれずに終わってしまったので再演を待つ。
優しくて、ナタリーにまっすぐ好意を向けて、辛抱強く支えてくれるヘンリー。
でも「待ってよ…」とか「とにかくほっといて!」と跳ね除けられたあとの表情とか、彼自身の想いもしっかりと伝わってくる。
Hey #3/Perfect For You (Reprise)があんなにハッとするような繊細で美しいシーンとは思わなかった。
「私もいつか狂うかも!」と崩れ落ちそうになるナタリーを下からしっかりと支えて、優しく抱きしめるヘンリー、身長差があまりないのもまた萌える。
「クレイジーでもいいよ。僕だって狂うかも。人生は狂ってる。でも僕が抱きとめる。」
もうね、本当にナタリーに彼がいてくれて良かったと思うんですよ。
(なんなら私とも結婚してくれヘンリー。)
相手を支えようとする姿はダンとダイアナとかぶる部分もあるけど、この2人なら色々なものを乗り越えていけるだろうなと思わせる、行き着いた先に希望を持てるカップルでとても良かった。。
「あなたは私のお気に入りの問題!」に返す「それさえ分かれば、いいよ。」が理想の彼氏すぎてな。
なんか知らないけど村井くんの演じる役って(あー付き合ってください。)って思う役多くないですか?私だけ?
ドクター 新納慎也さん
初演メンバーその③。
みんな大好き新納慎也さんww
何日かの2部のトークでお話しされていたけど、実は他のキャスト誰も決まっていない状態で真っ先に新納さんにオファーが来たそうで。
他はダブルで考えているけど、ドクターは他に考えられないのでシングルでと依頼されたそうです。
この「家族」のお話から一歩外にいて、でも彼らに関与するドクターという役。
ある意味、どうにでもなる役ですよね。だからこそ誰がどう演じるかが面白い。
絶妙でした。新納さん。
マッシュルームヘアのドクターファイン、薬のラベル見るのにメガネに押し当てたり、とぼけた顔で首傾げ&手首足首コテッって動きしてたり、小ネタ満載で絶妙な軽さww
一方、ドクターマッデンは緊張気味の客席の空気をぶち壊すパワフルさ、(Feeling Electricが実際に作中に入ったら新納さんに全部持っていかれる未来が見えるぜ…)
かと思えば手術着が超格好良い←
ロックな部分はダイアナの妄想だったりするわけですが、でもドクター自身が医者の立場として精一杯患者が正常に向かえるように判断を繰り返して、ダンやダイアナにもずっと信念を持って語りかけているのがちゃんと分かる。
ただ観ている間はこちらも感情の起伏が激しい家族の方に気持ちが持っていかれてしまうので「なんでよ!ドクター!」って思ったりするわけですが、冷静に思い直すと彼の立場と発言はもっともなんですよね。
病院シーンは基本ドクターが袖から椅子持参でゴロゴロ移動させるんだけど、
The Breakの時は超スピードでガラガラガラガラッってキャスター鳴らしながらセンターに駆け込んでくるのよね、あそこが何度見てもちょっと面白くて好きでしたww
ドクターは年齢設定等がないので、僕はいつまでもやりますよ!と宣言されてたのでそこはぜひ期待したいと思います。
***************
正直初日は、「え、芝居含めこんなにしっかりやるの!?」という驚きと、
あーでもまだギクシャクしてるかなーという気持ちでした。音響もあんまりだったし。
それがなんとまあ2公演目からグッと良くなって「え、そんな変わる!?」と思ったんですよね。
たぶん、1度お客さんが入った状態で演じたことで、お互いわーっと自分の主張を好き勝手な方向に飛ばしていたのが同じ方向を向くようになったというか。
役としてそれぞれ主張が別方向なのは当たり前なんですけど、作品への角度、客席にどう伝えていくか、という部分の角度がカンパニーで揃っていったように感じました。
それからはもう夢中で観るしかなかった。
本当に大好きだった。
なかでも各メンバーの噛み合い方が1番好みの濃厚さだったのが前楽の公演。
痺れたなぁ。
新納さん曰くダイジェストではこの作品の2%くらいしか伝わっていないそうなので笑、ぜひ100%を叩きつけていただきたい。
カテコのご挨拶でキャストの皆様の熱い想いを言葉で聞いて、さらに再演への気持ちが強まりました。
よろしく頼むよ。。
そして超短期稽古で鬼のような結果を見せつけてきた海宝ゲイブに関しては、別記事で気がすむまで書かせていただきます。